23 優勝者

 

『Fバン!!』

著:木耳 骨

全24話で完結するオリジナルスポーツアクション小説です。

▶ 本編全24話・目次はこちら

[『Fバン!!』ハブ投稿]



23 優勝者

 

静寂を破ったのは――

スタジオだった。

『決着ゥウウウウウウウウ――――ッッ!!!!!!』

司会者が、両腕をぶんぶん振り回しながら巨大モニター前へ飛び出した。

その絶叫と同時に、スタジオ上部から金と銀の紙吹雪が一斉に噴き出す。

パァン――!!

乾いた破裂音。

その直後。

天井いっぱいに仕込まれていた紙吹雪が、照明を反射しながら客席へ、ステージへ、巨大モニターの前へ、雪崩のように降り注いだ。

『例のないほど白熱したFIELD FINAL STAGEがァ!!

――ついに!!

ついに幕を下ろしたァアアアアアアア!!!!!』

客席が爆発する。

「うおおおおおおおおおお!!」

それはもう、地鳴りそのものだ。

視聴者コメントも爆発する。

《やべええええええ!!》

《なんだ今の決着!!》

《あーりぃいいいいん!!》

《ボーイスカウトォオオオ!!》

《オールドォオオオ!!》

客席は、歓声――拍手――悲鳴――笑い声。

立ち上がる観客。

両手を頭へ乗せたまま呆然としている者。

隣の知らない観客と肩を叩き合っている者。

なぜか泣いている者。


巨大モニターには――

まだ床へ倒れたままの周斗。

その上へ覆いかぶさる愛理。

そして――

少し離れた位置で、膝をつき、未だ片腕を伸ばしている及川。

三人とも動かない。

競技ウェアの判定表示だけが――

すでに結果を示していた。

及川。

《RETIRED》

愛理。

《RETIRED》

周斗。

赤い《1》

だが――

まだ順位だけは確定していない。


『待って待って待って先生ェ!!』

司会者が紙吹雪を頭へ乗せたまま、専門家席へ振り返る。

『最後のアレどうなった!?オールドが先か!?24番が先か!?というかほぼ同時だったゾォ!!』

そして――

普段なら、質問されてから3秒ほど考え、

『えー、あー、そのですねぇ……』

と始めるはずの桐生教授が、今回は違った。30メートル射撃のときよりも、興奮を露わにして身体を前へ乗り出していた。

目を見開いている。声も、明らかに一段高い。

『最後の当たり判定ですね!そこです!そこが非常に重要です!』

司会者が一瞬止まる。

『先生が速い!!』

客席から笑いが起きた。

『いやいやいや!これはさすがに興奮しますよ!』

教授自身も笑っている。

だが、すぐに巨大モニターへ視線を戻した。

『オールドが撃った時点で、まだオールド自身が被弾していたか。そこがまず一つ。それから、愛理選手が被弾したタイミング。この二つで最終順位が決まりますな』

非常に珍しいことに教授まで解説の中でもオールド呼びだ。

『只今ァ!!』

司会者が両手を机へ叩きつけた。

『スローモーションにて確認しております!!』

巨大モニターが切り替わる。

通常映像――三人。

そして――

時間が、引き伸ばされる。

周斗と及川。

ほとんど同時に上がる右腕。

愛理が横から飛び込む。

及川の指――周斗の指――射撃――

それは、通常なら瞬き一つで終わるほどの時間。

それが今――

一コマ。

また一コマ。

ゆっくりと進んでいく。

客席が静かになる。

さっきまでの大歓声が嘘のように、誰も声を出さない。

視聴者コメントだけが――

異常な速度で流れていた。

《どっち!?》

《先オールド?》

《いやボーイスカウトじゃね?》

《24番の判定いつ入った》

《これ順位変わるぞ》

《オールドの弾もう出てるな》

《ボーイスカウトも出てる》

《両方有効だろこれ》

《頼む頼む頼む》

《あーりん2位ある??》

《オールド優勝もまだある?》

《ボーイスカウト残り1だったよな》

《うわ心臓痛い》

《スポーツでこんな判定待ちさせんな笑》

《いや最高だろ》


映像がさらに拡大される。

及川の指先――

周斗の指先――

そこから発生したパルス軌跡。

それぞれが別方向へ伸びる。

司会者が、珍しく、黙っていた。

そして――

判定表示。

一瞬――電子音。

そして画面の一角に文字が出る。

司会者の顔が―― 一気に変わった。

『でましたァアアアアアア!!!!!!』

客席が立つ。

『まず!!ボーイスカウトとオールドのバン!!これは――ほぼ同時!!』

巨大モニターに射撃成立時刻が表示される。

そしてその下に、被弾時刻。

それぞれが数字で表示される。

『この時点では――どちらもまだリタイアしていない!!よって!!両方とも有効ォオオオ!!』

客席はボーイスカウトを応援しているのかオールドの応援をしているのか、どちらかわからない。いくつもの叫び声が一つになって、地鳴りとなる。

「うおおおおおおお!!」

『そしてぇええええ!!』


さらに拡大。

周斗の一撃が――及川の額へ。

その直後。

及川の一撃が――周斗の頭へ重なるように飛び込んだ愛理の頭へ。

判定タイム。

ほんの――

ほんのわずかな差。

『先に被弾したのはァ――!!』

司会者が、一度、思いっっっ切り息を吸う。

『オールドだァアアアアアア!!!!!!』

大歓声とともに、紙吹雪が、もう一度――

今度は左右のステージ脇から噴き出した。

パァン!!

パァン!!

『その差!!ごくわずかな――コンマ!!だが!!確かに!!オールドが先にリタイアァァァ!!』

教授が、初めて、机を軽く叩いた。

『いやぁ……!これはすごいですねぇ……!本当に、わずかです!』

司会者が振り向く。

『先生がめっちゃ興奮してる!!』

『しますよこれは!』

客席が笑う。

視聴者コメントも結果を尋常ではない速度で共有し、拡散する。

《うおおおおおおお!!》

《決まったああああ!!》

《少佐戦より心臓に悪い!》

《コンマ差www》

《あーりん2位!?》

《24番準優勝きたあああ》

《オールド3位かあああ》

《でもかっこよすぎる!》

《ボーイスカウト優勝www》

《誰が予想した》

《俺が知ってるFIELDじゃない》

《初戦補助具男だぞ》

《補助具どころじゃねえ》

《BOMB》

《JET》

《SLASH》

《30m》

《CQC》

《全部意味わからん!》

《もうボーイスカウトじゃないだろ》

《いや最後までボーイスカウトでいてほしい》

《FIELDってこういう競技だったか!?》

《FIELD最高》

《今年のFINAL神》


司会者が、腰ほどの高さの机の上へ、片足を乗せた。年甲斐もなく、大袈裟に。

『これにてぇええええ!!順位はァ――――!!』

巨大モニターが暗転。

ドラムロールが鳴り響き、スタジオ照明が落ちる。

一筋のスポットライト。

そして――

《3rd》

巨大な数字――その下へ。

《オールド――及川 良》

『第3位ィイイイ!!オールドことぉ――及川良ォオオオオオ!!!!!』

客席からは激しい拍手と声援が飛ぶ。

「オールドォオオオ!!」

「また来いよぉおおお!!」

「最高だったぞぉ!!」

「カッコいいぃいいい!!」

 

次。

《2nd》

《No,24――三条 愛理》

『第2位ィイイイ!!24番!!三条愛理ィイイイイ!!!!!』

別方向から悲鳴に近い歓声。

「あーりぃいいいん!!」

「24番が2位ィ!?」

「ベスト8どころじゃねぇ!!」

 

そして――

モニターいっぱいに。

《1st》

一拍。

《ボーイスカウト――三元 周斗》

司会者が両腕を広げた。

『そして!!栄えある!!FIELD FINAL STAGE!!第1位!!堂々の優勝はァアアアアアアア!!』

客席がもう待てない。

「ボーイスカウトォオオオ!!」

「ボーイスカウトォオオオ!!」

司会者が、そこへ被せる。

『“ニッポン最強フィールダー”はぁッ!!――ボーイスカウトことォ!!三元ォオオオ!!周斗ォオオオオオオオオオ!!!!!!』

ステージ上に再び紙吹雪が舞う。

《ジャッポンじゃない!?》

《ニッポンだ!!》

《日本最強!!》

《最強のアマチュア!!》

《ボーイスカウトは最強の代名詞!!》

視聴者たちも、やっと司会者の口から飛び出した言葉にすぐさま反応する。

けれどもそんなツッコミももはや無粋。次々と流れる最強への賛辞のコメントの荒らしだ。

照明――観客――モニター演出――歓声――

そのすべてが――

優勝者を飾った。

 

◇

 

体育館――。

スタジオの声は、場内スピーカーを通して三人のところにも届いていた。

『第1位!!三元周斗ォオオオ!!』

その音を聞きながら、周斗はまだ床に倒れていた。

愛理も、ほとんど重なるように倒れている。

及川も、少し離れたところで仰向けになっていた。

誰も――

すぐには立たなかった。

さっきまで、あれほど激しく動いていたのに。

終わった瞬間――

急に身体が重くなった。

最初に口を開いたのは。

周斗だった。

「……合図するまで出てくるなって言ったろ」

その声には怒気はない。

愛理が周斗の上で顔だけを少し上げる。

「でもぉ……」

そして少しだけ頬を膨らませる。

「私が来なかったら、負けてましたよぉ~?」

周斗が少し困ったような顔をして、黙る。

そして――

「……そうだけどさ」

それから深く、息を吐く。

「まぁ――」

少しだけ、その口元が緩んだ。

「助かったぜ。ありがとな、愛理」

そう言って、周斗が手を伸ばす――愛理の頭へ。

ぽん。

軽く撫でる。

愛理は、一瞬きょとんとして。

それから――嬉しそうに笑った。

「えへへ」

その瞬間、横から呆れ声がした。

「ったく……」

及川が、頭をボリボリと掻きながら起き上がる。

「イチャつきやがって」

「イチャついてはいねぇっすよ」

周斗が即答する。

愛理は、「えぇ~?」と、なぜか不満そうだった。

及川が笑う。

しかし、周斗は、少し真面目な顔になる。

「及川さん……」

及川は、一度――周斗を見る。

次に――愛理を見た。

そして――

「完敗だよ」

静かに、そう言った。

「おまえたちの勝ちだ」

今度は力強く。

周斗はわずかに目を伏せる。

「けど――」

そして拳を握る。

「俺一人では、勝てませんでした」


愛理がいたから、勝てた。けれども、本当は愛理が出てくるのは、合図をしてから――そのはずだった。

体育館へ入り、別れる間際に見せたハンドサイン――

開かれた手のひらは――『待て』。

握られた拳は――『じっと』。

親指は――『俺が勝つまで』。

――だった。

その最後の合図を、周斗は出せなかった。

そして、約束を破り、自らを犠牲にして自分を守るため飛び出した愛理。

周斗の胸中には、複雑さが渦巻いていた。


そこへ及川が、少しだけ首を傾げた。

それから――

嫌味のない、爽やかな笑顔を向ける。

「それがFIELDだろ?」

周斗が驚いたように顔を上げる。

及川は続ける。

「少佐戦だってそうだったじゃねぇか」

そう言って肩を竦める。

「一人で全部やる競技じゃねぇ」

それから指を折るように、一つずつ――

「隠れるのも――」

「逃げるのも――」

「誰かと組むのも――」

「誰かに助けられるのも――」

「誰かを利用するのも――」

そこで少しだけ、口元を上げてはっきりと、言い切った。

「全部――FIELDだ」

周斗は黙って聞いている。

及川がさらに諭すように言う。

「良いんだよ――こういう決着があったって」

「……はい」

周斗はそれだけ答えた。

だが――

それでも胸の奥に、まだ、小さな引っかかりが残っていた。

やっぱり、本当は一人で勝ちたかった。

真正面から――

一対一で――

――この、“オールド”に。

廃墟での記憶が、甦る――そして気付いた。

二階から、高いところから見下ろしていた及川に、挑戦したいと思っていたことに。

ずっと上にいた人間へ。

単独で――届きたかった。

結果としては優勝。

順位だけ見れば、自分が上。

だが――周斗自身が一番よくわかっている。

――まだ。

Fバンそのものでは、オールドへ届いていない。

真正面から――

同じ条件で――

最後まで――

―― 一人で。

それを証明したかった。

だから――嬉しい、そのはずなのに、完全には喜びきれない。


そんな周斗へ及川が胸を張って証明してみせる。

「それにな――」

親指を――

体育館入口の方へ向けた。

「ほれ」

周斗と愛理が振り返る。

体育館入口。

そこに――

人がいた。

一人――二人――三人。

早瀬。

藤沢。

少佐。

そしてその後ろには――

大会スタッフ――医療スタッフ――カメラマン。

もう、ファイナリストたちも競技者ではない。

終わった者たち。

けれど、全員が――

笑っていた。

そしてその光景に、周斗と愛理は自然と立ち上がっていた。

「ただのスタントマン志望だったんだけどな……」

ぼそりと、周斗が呟く。

及川が眉間をこれ以上ないほど深く寄せ、眉頭を跳ね上げる。

「はぁ?なぁーに言ってんだ――」

それから目を見開いて、得意げに、はっきりと言った。

「スタントマン志望の――日本最強のフィールダーだろ!!」

そして誰かが最初に叫んだ。

「ボーイスカウトォオオオオ!!」

次の瞬間――

全員が駆け込んできた。

「ちょっ!おいおい待て待て!」

周斗が一歩引く。

だが遅い。

及川が周斗の右腕をがっしりと掴んだ。

そして――

そのまま天井へ向けて、その腕を高く掲げ、叫ぶ。

「ボーイ――スカウトォオオオ!!」

そして誰からともなく――

「ボーイ!!」

「スカウト!!」

「ボーイ!!」

「スカウト!!」

大合唱だ。

周斗が本気で嫌そうな顔をする。

「だからそれもう――」

言い切る前に――

身体が浮いた。

「うおっ!?」

胴上げだ。

「おい!!待て待て待て待て!!」

一度。

上。

「落とすなよ!?」

二度。

上。

「マジで落とすなよ!!」

三度。

上。

「おまえら全員フィールダーだから怖ぇんだよ!!」

笑い声が上がるが、胴上げは止まらない。

「大丈夫ですよ!受け身得意でしょ?」

アサシン――いや、藤沢が悪戯っぽく声を上げる。

「そういう問題じゃねぇ!!」

少佐も――

「JETで着地したまえ」

「天井から撃てってか!!」

笑い――歓声――

そして、その少し外――

愛理が、笑いながら周斗を見ていた。

満足そうに。

嬉しそうに。

それを、藤沢が見つけた。

「愛理さん」

「え?」

藤沢が、口元だけ笑う。

「あなたもですよ」

指を向ける。子供の指鉄砲の仕草で――

「準優勝の――24番さん」

「え??」

愛理が、一歩下がる。

少佐が――

「ほらっ、お嬢さん!」

その背中を押した。

「ちょっ――」

早瀬も加わる。

「準優勝ですよ!」

「待って待って――」

そして――

愛理も持ち上がった。

「きゃああああああああ!!」

一度。

二度。

三度。

周斗――愛理。

二人が――別々の場所で。

同時に宙へ舞う。

体育館の照明。

競技ウェア。

スタッフ。

カメラ。

敗者。

勝者。

全員の笑顔。

さっきまで本気で潰し合っていた選手たちが――

今は――

互いを――

高く。

高く。

持ち上げていた。

 

◇

 

クジラアクションクラブ。

大型モニターの前。

「勝ったァアアアアアアア!!!!」

社長が――

泣いていた。

完全に、泣いていた。

「うちの秘蔵っ子が!! 勝ったぁああああああ!!」

その後ろ、屈強なスタントマンたちも、もう誰が先輩で誰が後輩かわからないほど――

肩を組み。

拳を突き上げ。

騒いでいる。

「周斗ォオオオ!!」

「やりやがった!!」

「マジかよあいつ!!」

「おまえFIELD部門転向しろ!!」

「いやスタントやれ!!」

「両方やれ!!」

「アンタたち、うるさぁあああい!!」

社長が涙を拭きながら怒鳴る。

そして――

また画面を見る。

胴上げされる周斗。

鼻をすすった。

「世界一のスタントマンになる前に……」

もう一度。

目元を押さえる。

「日本一のフィールダーになってどうすんのよぉおおお!!」

その場にいた全員が――

一瞬。

黙って。

そして――

大笑いした。

 

◇

 

一方。愛理の所属事務所、上層部。

こちらも――

完全に壊れていた。

「えっ!?」

「待って待って待って待って!!」

「準優勝!?」

「24番が!?」

「いや愛理でしょ!!」

「どっちでもいい!!」

 

そしてアイドルグループ控え室ではメンバーが――

画面を指差しては、立ち上がり――座り――また立ち上がり。

完全に意味のない動きを繰り返している。

「ベスト8じゃなかったの!?」

「ベスト8って言ってたよね!?」

「なんで2位なの!?」

「知らないよ!!」

「なんであの子胴上げされてんの!?」

「準優勝だからでしょ!!」

「てか!さっきの!チューしてない!?」

意味不明なパニック。

その中で、一人。

マネージャーだけは――

違う種類のパニックになっていた。

スマートフォン――タブレット――別のスマートフォン――PC――

全部を見る。

通知――着信――メール――メッセージ。

すでに、波のように来ていた。

「……うわ」

一件。

また一件。

「ちょっと待って」

さらに――

「これは……まずい!」

メンバーたちが一斉に振り返る。

「何が!!!???」

マネージャーが青ざめた顔で画面を見せる。

「取材依頼――」

「え?」

「番組出演――」

「え??」

「ネット配信――」

「え???」

「FIELD特番――」

「え????」

「スポーツ誌――」

「え?????」

「あと――」

スクロール。

「愛理単独での取材が……」

さらに――

「――もう来てる」

全員が――停止する。

そして――

「あぁあああああああああんん!?」

最後はなぜか怒りのような声を上げた。

今度は別の意味で大混乱だ。

「どうすんの!?」

「衣装!!」

「スケジュール!!」

「明日何あった!?」

「知らない!!」

まるで自分たちが売れたかのように混乱するメンバーへ、マネージャーがまっとうに突っ込む。

「いや出るの、あーりんだからね!!」

そしてその中心で、マネージャーは頭を抱えながら、極めて現実的に、

呟いた――

「……ベスト8想定で組んだ予定……全部崩れた……」

 

◇

 

体育館――

胴上げが終わった。

周斗が少しよろけながら床へ降りる。

愛理も、髪を乱しながら――笑っている。

及川。

レオン。

藤沢。

早瀬。

ファイナリストたち“フィールダー”。

勝者も。

敗者も。

もう、そこに上下はなかった。

もちろん、順位はある。

勝者がいる。

敗者がいる。

だが――

終われば。

全員。

同じ。

FIELDを戦った者。

それだけだった。

ゲームでは敵。

だが競技が終われば、仲間。

同じ場所で。

同じルールで。

同じ頂点を目指した。

プレイヤー。

フィールダー。


周斗が周囲を見る。

及川。

レオン。

藤沢。

早瀬。

そして――

愛理。

長かった――三日間。

森。

補給。

夜。

廃墟。

狙撃。

追跡。

同盟。

裏切り。

逃走。

BOMB。

JET。

SLASH。

CQC。

30メートル。

そして――最後の一発。

全部、ここへ来るためにあった。

いや、ここへ来るためだったのかどうかさえもう、わからない。

ただ――

確かなことが一つ。

周斗は――優勝した。

一人で、ではない。

愛理と。

及川と。

藤沢と。

レオンと。

早瀬と。

ここまで戦った。

全員と――

そのFIELDの中で――勝った。


場内スピーカーからは、まだ司会者の声が響いている。

『さぁあああ!!今年のFIELD FINAL STAGE!!最後まで!!最後まで何が起きるかわからなかったァ!!』

客席――スタジオ――視聴者――コメント欄。

すべてがまだ、止まらない。

《おめでとう》

《周斗!!Shoot!!》

《あーりんおめ》

《オールド最高だった》

《少佐も藤沢も早瀬も全員やばかった》

《全員主役だった!》

《FIELD見ててよかった》

《今年伝説だろ》

《これ来年超えられるのか》

《ボーイスカウト優勝おめでとう!!》

《24番準優勝おめでとう!!》

《オールドまた来い》

《みんなまた見たい》

 

周斗が小さく息を吐く。

その横で――

愛理が笑う。

及川が――鼻で笑う。

レオンが――肩を軽く回す。

藤沢が――何も言わず、ほんの少しだけ口元を上げる。

早瀬は――清々しい笑みを浮かべる。

誰も――

もう――

撃たない。

FIELDは、終わった。

そして――

優勝者が――決まった。


――――――――――


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