『フィフス・ウェイブ』の個人的な考察・感想

 『フィフス・ウェイブ』の個人的な考察・感想

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①『フィフス・ウェイブ』(2016年・アメリカ・監督:J・ブレイクソン)


② あらすじ(起承転結・ネタバレあり)

【起】

高校生のキャシーは、ごく普通の日常を送っていた。

しかしある日、正体不明の宇宙船が地球上空へ現れ、人類への侵略が始まる。

侵略は一気に行われるのではなく、段階的な“波”として進められていく。

第1波。

電磁パルスによって、電気や通信、車両など文明の基盤が停止する。

第2波。

巨大地震と津波によって都市や沿岸部が壊滅。

第3波。

鳥を媒介とした強力なウイルスによって、人類の大部分が死亡する。

そして第4波。

宇宙人は人間の姿へ入り込み、人間社会へ潜伏しているとされる。

生き残った人々は、

「目の前にいる人間は、本当に人間なのか?」

という疑心暗鬼へ追い込まれていく。

キャシーは家族とともに生き延びようとするが、やがて父を失い、弟サムとも離ればなれになる。

キャシーはサムを取り戻すため、一人で行動を始める。

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【承】

一方、サムを含む子どもたちは軍によって保護される。

そこにはキャシーの同級生だったベンもいた。

軍は、

「宇宙人は人間へ寄生している」

「特殊な装置を使えば、人間と宇宙人を識別できる」

と説明する。

子どもたちは訓練を受け、

敵を識別する特殊なスコープを持たされる。

そして、

「人類を守るため」

という名目で実戦へ投入される。

しかし観客側から見ると、この軍隊は最初からかなり怪しい。

探知装置。

スコープ。

子どもを兵士として利用する方針。

宇宙人を識別する仕組み。

どれも、

「これ本当に正しいのか?」

と疑いたくなる要素ばかり。

一方、弟を探すキャシーは何者かに狙撃され、負傷する。

彼女を助けたのは、エヴァンという青年だった。

キャシーは彼の家で傷を癒やしながら、サムの居場所を探そうとする。

しかしエヴァンにも、明らかに普通ではないところがある。

その正体は、宇宙人側の存在。

彼は人間社会へ紛れ込むために作られた存在でありながら、キャシーへ特別な感情を抱くようになっていた。

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【転】

ベンたちは軍の命令によって、宇宙人が潜伏しているとされる地域へ送り込まれる。

ところが次第に、

自分たちがスコープ越しに“敵”だと思って撃っていた相手が、本当は普通の人間だった可能性へ気づく。

軍は人間の子どもたちへ、

「相手は宇宙人だ」

と思わせ、

人間同士を殺し合わせていた。

これこそ第5波。

宇宙人が自ら人類を狩るのではなく、

人間へ人間を狩らせる。

それまでの侵略によって社会を破壊し、

人口を減らし、

人々の信頼関係を崩壊させ、

最後には生き残った人間同士へ疑心暗鬼を植えつける。

人類そのものを、人類殲滅の道具として使う。

これが宇宙人側の狙いだった。

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キャシーもまた、エヴァンの正体を知る。

彼は宇宙人側の存在だった。

しかしエヴァンは、キャシーとの出会いによって自分の役割へ疑問を持つようになっていた。

人類を滅ぼす側に属しながら、

一人の人間を愛してしまった。

その結果、彼は自分を作った側へ反逆する。

キャシーはエヴァンの協力を受けながら、軍施設へ潜入。

弟サムを探す。

同時にベンたちも軍の嘘を知り、子ども兵として利用されていた状況から脱出しようとする。

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【結】

キャシーはついにサムを見つける。

ベンたちとも合流し、施設からの脱出を図る。

エヴァンはキャシーたちを逃がすため、一人で軍施設へ残る。

彼は施設内部へ爆発物を仕掛け、大規模な爆破を引き起こす。

結果としてキャシーたちは脱出に成功。

サムも救出される。

しかし、宇宙人による地球侵略そのものが終わったわけではない。

倒したのは、あくまで数ある施設の一つ。

第5波も終わっていない。

宇宙人側の全体像も、完全には明かされない。

映画として描かれた決着は、

キャシーが弟サムを取り戻したこと。

ベンたちが軍の欺瞞から脱したこと。

そしてエヴァンが、キャシーへの愛によって自らの側へ反逆したこと。

大きな侵略戦争の中の、まだ第一章ともいえるところで物語は終わる。

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③ 考察・感想・まとめ

『フィフス・ウェイブ』。

まず率直な感想としては、

まあ、普通に面白かったです。

ただ、

本当に普通。

ものすごくつまらないわけではない。

破綻もしていない。

テンポもそこまで悪くない。

設定もそれなりに面白い。

でも、

「これは良かった!」

と強く残るものもない。

期待していたわけではなかったけど、それでもちょっと肩透かしは食った。

そんな作品でした。

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まず良かったのは、宇宙人による侵略方法。

これは結構好きです。

いきなり宇宙船からレーザーを撃って都市を破壊するのではない。

第1波で電磁パルス。

第2波で地震と津波。

第3波でウイルス。

第4波で人間社会への潜伏。

そして第5波。

人間に人間を殺させる。

この段階設計は、かなり面白い。

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特に第5波。

これが一番良い。

宇宙人が直接撃ち殺す必要はない。

人間同士を疑わせればいい。

誰が人間で、誰が宇宙人かわからない。

そこで、

「相手は敵だ」

と思わせる装置を渡す。

子どもたちへ武器を持たせる。

そして人間同士で殺し合わせる。

侵略の最終段階が、

火力ではなく、人間社会の信頼関係の破壊。

ここはかなり良い発想。

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ただ。

その一番面白い第5波が、映画ではそんなに怖くない。

理由は単純。

軍が最初から怪しすぎる。

これ。

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探知機。

スコープ。

子ども兵。

説明。

行動。

全部怪しい。

だから、

「軍を信用していいのか?」

という疑問がすぐ出る。

そして、

「これ、人間を宇宙人だと思わせて撃たせてるんじゃない?」

までかなり早く読める。

本来なら、

もっと信頼できる軍として描いたほうが良かった。

本当に人類最後の砦。

大人たちが命懸けで子どもを守っている。

そう思わせる。

そこから、

実は人間同士を殺させていた。

までひっくり返せば、かなり効いたはず。

でも今回は、

「怪しいな」

「やっぱ怪しかった」

で終わる。

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エヴァンも同じ。

キャシーを助ける。

妙に強い。

何か隠している。

はい。

宇宙人側だろうな。

で、

実際そう。

でもキャシーを好きになる。

はい。

裏切るだろうな。

で、

実際そう。

最後にキャシーたちを逃がす。

はい。

自分が残って爆破するだろうな。

で、

実際そう。

本当に予想を裏切らない(笑)。

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悪いわけじゃないんですよ。

むしろ、

すごく素直に作ってある。

だから安心して観られる。

でも驚きもない。

「次こうなるかな」

と思ったら、

ほぼそのまま来る。

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キャシー軸とベン軸を並走させた構成も悪くなかった。

キャシー側。

弟を探す。

エヴァンと出会う。

宇宙人と人間の境界へ近づく。

ベン側。

軍に保護される。

訓練。

子ども兵。

第5波の正体へ近づく。

二方向から同じ侵略を見せる。

構造としてはわかりやすい。

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ただ、

映画の前半で各“波”をかなり丁寧に描いているぶん、

「で、本編はいつ始まるの?」

という感じも少しありました。

電磁パルス。

地震。

津波。

感染症。

社会崩壊。

ここを全部ちゃんと描く。

世界観説明としては丁寧。

でも結果、

キャシー自身の本編が動き出すまで少し長い。

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これは後から考えると、

原作シリーズの第一章だからなんですよね。

本来なら、

「地球侵略が始まりました」

という導入。

世界が壊れた。

家族がバラバラになった。

宇宙人の侵略方法がわかった。

第5波が始まった。

ここまで。

つまり、

巨大な物語のプロローグ。

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もし最初から映画三部作として腰を据えて作るつもりなら、もっと良かった可能性はあったと思う。

第1作。

侵略開始。

文明崩壊。

家族離散。

キャシーがサムを取り戻す。

第2作。

第5波。

潜伏。

疑心暗鬼。

エヴァンの正体。

人間側の反撃。

第3作。

侵略全体の決着。

これくらいなら、一作ずつもっと掘れた。

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でも単発映画として見ると、

「地球規模の侵略映画を観た」

というより、

「侵略映画のプロローグを一本観た」

感じになる。

だから中身が薄く感じる。

描いている出来事は大きい。

世界人口は激減。

文明も崩壊。

都市も破壊。

でも主人公たちのドラマとしては、

まだ始まったばかり。

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結局、この一本で達成されたことは、

キャシーがサムを取り戻した。

ベンたちが軍の嘘に気づいた。

エヴァンがキャシーのために宇宙人側を裏切った。

これくらい。

地球は救われていない。

侵略も終わっていない。

宇宙人を倒してもいない。

一つの施設を潰しただけ。

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だからスケール感とドラマの大きさが一致しない。

世界では人類絶滅レベルの出来事が起きている。

でも物語の中心は、

「離ればなれになった姉弟が再会する話」

なんですよね。

それ自体は悪くない。

むしろ主人公の目的としてわかりやすい。

でも、

そこまで壮大な宇宙侵略設定を使ったわりには、

やっぱり小さくまとまったな、

という印象は残る。

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侵略方法についても、ちょっと気になった。

第3波のウイルス。

あれ、かなり強い。

鳥インフルエンザを改良したような感染症で人類を大量に殺した。

だったら、

もう一回ウイルスで攻めればよくない?

ってなる。

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もちろん、

一度生き残った人間には耐性があるかもしれない。

地理的に分散している。

変異リスクがある。

地球環境への影響もある。

だから最後は人間同士で殺し合わせたほうが効率的。

そういう説明はできる。

でも、

映画内で戦略としてそこまで整理してない。

だから観客側で補完することになる。

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そして、

「人類だけをなるべく効率的に消して地球を使いたい」

という目的なら、

地震と津波は結構地球側も壊してない?

という疑問もある。

ただ、

これも考えようによってはわかる。

宇宙人が欲しいのは、

人間の都市や文明ではなく、

生命が生存可能な惑星そのもの。

なら都市が津波で壊れても構わない。

数十年、数百年単位なら地球は回復する。

核兵器で全面汚染するよりはマシ。

そういう考えなら成立する。

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でも、こういうことを考えると、

宇宙人侵略ものって、

やっぱり尖らせるの難しいんですよね。

宇宙人が恒星間航行できるほど強いなら、

「なんでそんな回りくどい方法使うの?」

となる。

人類が普通に戦える程度なら、

「そんな文明レベルで地球まで来られるの?」

となる。

だから、

なぜその侵略方法なのか

に説得力を持たせないといけない。

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『フィフス・ウェイブ』は、

そこへ、

「人間社会そのものを武器にする」

という答えを出した。

これは良い。

でも、その一番おいしい部分を深掘りせず、

YA系のサバイバルと恋愛へ収束した。

だから尖らなかった。

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エヴァンについても、かなり面白いテーマへ行けたと思う。

宇宙人側の存在。

でも人間の女性を愛する。

では、

人間とは何か?

敵とは何か?

身体が人間なら人間?

宇宙人として作られていても、

人間的な愛情を持てば、人間に近づくのか?

自分を作った側と、

自分が愛した側。

どちらを選ぶ?

ここを掘れば、

結構ちゃんとしたSFドラマになる。

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でも実際は、

「愛の力で宇宙人側を裏切りました」

くらいで終わる。

悪くない。

わかりやすい。

でも浅い。

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そして最後の爆破。

エヴァン、

あれだけの爆薬どこから持ってきた(笑)。

単独で施設へ入り。

爆弾を大量設置。

巨大爆発。

「いや、火力すごくない?」

となる。

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もちろん、

宇宙人側だから施設構造を知っている。

爆薬や燃料の場所も知っている。

内部設備を利用した。

誘爆させた。

そういう理屈なら通る。

でもその過程をほとんど見せない。

だから、

エヴァン単独スニークミッション成功!

からの大爆発!

になってる。

まあ、

こういうSFだからいいか。

くらい。

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ただし、

この作品を『イビルアイ』みたいに、

「穴が多い」

とは思わない。

ここ、かなり違う。

説明不足で破綻しているわけではない。

脚本が整理できていないわけでもない。

むしろ、

狙ってこのくらいにしている。

そう見える。

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つまり、

甘いというより、

安牌。

これ。

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設定を尖らせすぎない。

軍の正体もわかりやすい。

エヴァンの恋愛もわかりやすい。

姉弟愛もわかりやすい。

若者たちが協力。

善悪もかなり明快。

最後は希望を残す。

大外ししない。

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たぶん、

「ここまでやれば広い層が普通に観られるYA系SFになる」

というところを狙ったんだと思う。

それなら理解はできる。

映画として破綻しているわけではない。

むしろ狙い通り作れている。

だから低評価というより、

高評価する材料が少ない。

という感じ。

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もっとパラノイアへ振ることもできた。

もっと宇宙侵略へ振ることもできた。

もっとエヴァンを掘ることもできた。

もっと人間同士の疑心暗鬼を描くこともできた。

もっと恐怖を強くすることもできた。

でも、

そこまでやらない。

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尖らせる気も、

熱くする気も、

そこまでなかった。

安全なところでまとめた。

そんな印象です。

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だから、

「もっと面白くできただろ」

とは思う。

でも、

「映画として失敗してる」

とまでは思わない。

むしろ、

狙っていたところにはちゃんと着地している。

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『ラディウス』みたいに、

設定からさらに、

人格。

善悪。

記憶。

贖罪。

人間性。

までどんどん掘れる作品ではない。

『フィフス・ウェイブ』は、

表に出ているものが、

ほぼそのまま全部。

考察しても、

「実はここにすごい深層テーマが」

みたいにはならない。

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だから最終評価もシンプル。

面白かった。

でも普通。

期待していたわけではない。

それでも少し肩透かし。

ただ、

安定して作られているから良し。

高く評価はできないけど、

「狙った通りの安牌映画を作りました」

なら理解できる。

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侵略の五段階というアイデアは良かった。

第5波も面白い。

二軸構成も悪くない。

キャシーとサムのドラマも成立している。

エヴァンの反逆もわかりやすい。

でも、

全部予想通り。

全部無難。

全部そこそこ。

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なので、

「ちゃんと作ってある。でも特別なものはない。」

これが一番しっくりきます。

駄作ではない。

傑作でもない。

尖ってもいない。

失敗もしていない。

普通に観られる、普通のYA系宇宙侵略SF。

そんな一本でした。


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