『イマジナリー』の個人的な感想・考察

 『イマジナリー』の個人的な感想・考察


①『イマジナリー』(2024年・アメリカ・監督:ジェフ・ワドロウ)


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②あらすじ

【起】

絵本作家のジェシカは、夫マックスと、彼の娘であるテイラー、アリスの姉妹とともに、自分が幼少期を過ごした家へ引っ越す。

姉のテイラーは新しい家庭環境に反発気味で、妹のアリスもまた、実母との関係などから不安定さを抱えていた。

そんな中、アリスは地下室で古びたテディベアを発見する。

アリスはその熊を「チョンシー」と名付け、イマジナリーフレンドとして遊び始める。

最初こそ、ごく普通の子供の空想遊びに見えた。

しかしアリスは、チョンシーから指示されたという「宝探し」のようなゲームを始め、次第に危険な行動を取るようになっていく。

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【承】

ジェシカはアリスの様子に違和感を覚えるが、やがてチョンシーが単なる空想上の友達ではないことが明らかになっていく。

そしてジェシカ自身にも、幼い頃この家でイマジナリーフレンドと遊んでいた過去があった。

彼女は幼少期のトラウマによって当時の記憶を封じ込めており、その存在を忘れていた。

つまり、チョンシーはアリスが新たに作り出した存在ではない。

ジェシカが子供の頃に生み出し、彼女が成長するとともに置き去りにしてしまった「想像の産物」が、長い時間を経てもなお残っていた。

家庭環境への不安を抱えていたアリスは、そんなチョンシーにとって格好の標的になってしまった。

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【転】

チョンシーは、ただのテディベアとして存在しているわけではなかった。

子供たちの想像力から生まれた存在たちは独自の領域を形成し、現実世界とは異なる「想像の世界」が存在していた。

アリスはそこへ囚われてしまう。

ジェシカたちは彼女を救うため、その異界へ入り込むことになる。

しかしここから作品の雰囲気は、それまでの怪異ホラーというよりもかなりファンタジーアドベンチャー寄りになっていく。

現実と異界の境界は比較的明確で、物理的に異世界へ入り、進み、危険を突破して囚われたアリスを救出するという、ある意味では「ダンジョン攻略」のような構造になっている。

チョンシーも次第に正体を露わにし、理解不能な怪異というより、明確な目的を持った怪物としてジェシカたちの前に立ちはだかる。

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【結】

ジェシカは自分が幼い頃に残してしまったチョンシーと対峙し、アリスを救い出そうとする。

チョンシーにとってジェシカは、かつて自分を必要としていながら、大人になることで自分を忘れ、置き去りにした存在でもあった。

だがジェシカは過去へ戻るのではなく、現在の家族を選択する。

家族は異界から脱出し、チョンシーとの因縁にも決着をつける。

こうしてジェシカは封じていた幼少期の記憶と向き合い、同時に、自分と似たような孤独を抱えていたアリスを救うことになる。

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③考察・感想・まとめ

普通にちゃんとまとまっていたし、それなりに面白かった。

ただ、とにかく「普通」。

観たまんま以上の感想がなかなか出てこないくらい、意味深さがないホラーだった。

別にゴア描写がないことは問題ではない。ゴアだけがホラーではないからね。

ただ、ゴアがないだけではなく、怖さもほぼない。

強烈にビックリさせてくるわけでもないし、後から考えるほど嫌になるような不気味さもない。

イマジナリーフレンドが実体化してしまう。

子供たちの想像の集合が異質な存在を生み出す。

想像によって作られた異界が存在し、そこへ人間が囚われる。

この辺りはホラーやダークファンタジーではかなり見慣れた題材で、とくに真新しいものではなかった。

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むしろ終盤になるほど、ホラーというよりファンタジーアドベンチャーだったと思う。

この作品の異界は、現実世界との境界がかなり明確。

しかも物理的に移動できてしまう。

「何が現実なのかわからない」

「いつの間にか怪異の領域へ入り込んでいた」

「理解できない何かに現実そのものを侵食されている」

という怖さではなく、

「ここから先が異世界です」

「中に入って囚われた人を助けます」

という構造になっている。

さらに敵も姿を現し、最終的には怪物と対峙する。

そうなるともう、怪異から逃げるホラーというより、

危険な異世界へ行って、敵を退け、仲間を救出して帰ってくる冒険もの

なんだよね。

ここが怖さをかなり削っていたと思う。

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大人向けホラーとして作るのであれば、素材そのものはもっと深くできたはず。

ジェシカの幼少期のトラウマ。

姉妹が抱えている実母との問題。

新しい母親となったジェシカとの距離。

表面的にはそれなりに成立しているけれど、実際には少しずつ歪んでいる家族関係。

子供の心の傷を、大人たちが十分に理解できていないこと。

子供から見た大人への不信。

そして、現実よりも「自分だけを理解し、必要としてくれる空想上の友達」を選びたくなってしまう心理。

ここまで踏み込めば、かなり陰鬱なホラーにできたと思う。

アリスのイマジナリーフレンドへの依存だって、

「怪物に操られています」

だけではなく、

本当は現実の家族より、チョンシーと一緒にいるほうが心地いいのではないか?

というところまで行けたら一気に怖くなる。

怪異に連れ去られる子供ではなく、子供自身が少しずつ怪異の側を選び始める。

そこまで描けば、ずっと嫌な作品になっただろうね。

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そしてジェシカとアリスは、かなり意図的に似た存在として配置されている。

どちらも、子供時代の不安や孤独からイマジナリーフレンドへ逃避する。

ジェシカはそこから成長して現実世界へ戻った。

しかしそのとき置き去りにされた存在が、今度はアリスを捕まえようとする。

だから物語としては、

ジェシカがアリスを救うこと=かつて救われなかった幼い自分自身を救い直すこと

とも読める。

この部分は題材としてかなり良かった。

同時にチョンシーも、

「寂しい子供を救うために生まれた存在だったのに、その子供が成長して自分を必要としなくなったことを受け入れられず、怪物になった」

と考えれば、もっと悲しくて怖い存在にできたと思う。

ただ本編では、そこまで深く踏み込む前に怪物退治へ向かってしまう。

ちょっともったいなかったね。

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終盤も、もっと異質なものにできた。

怪物を倒すことを目的にせず、

空間そのものがおかしい。

進んでも同じ場所へ戻ってくる。

過去と現在が混ざる。

ジェシカの幼少期の記憶と、現在のアリスが重なって見える。

助け出したアリスが本当に本人なのかわからない。

現実へ戻ったと思ったら、まだ想像の世界だった。

チョンシー自身も最後まで姿を固定せず、「結局これは何だったんだ?」という異物感を残す。

そういう方向へ振って、

わけのわからない理不尽な領域から、家族が必死に救出・脱出する

という展開なら、かなりホラーらしくなったと思う。

怪物退治アドベンチャーにしてしまったことで、観客側が世界の構造を理解できすぎてしまった。

ホラーは、理解できないから怖い部分も大きいからね。

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そしてアリスとテイラーの姉妹については、かなりの被害者だったと思う。

二人には実母との問題があり、とくにアリスにはイマジナリーフレンドへ逃避してしまうだけの心理的な土台はあった。

でも、そもそもチョンシーを作ったのはアリスではない。

ジェシカが幼少期に残したもの。

あの家へ引っ越してこなければ、アリスがチョンシーに引っ張られることもなかった。

整理すると、

新しい継母と暮らすことになった。

その継母の昔の家へ引っ越した。

そこで継母が子供時代に作り、忘れていた怪異に遭遇した。

そして命まで狙われた。

……姉妹からすれば、とんでもない災難である。

もちろんジェシカ自身にも悪意はないし、最後には命懸けでアリスを救っているので、彼女を責める話ではない。

ただ姉妹側から見ると、本当に完全な巻き込まれ事故だったね。

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とはいえ、ここまで「もっとこうすれば怖くなった」と考えられるのは、こちらが大人向けホラーとして観ているからでもある。

対象を子供まで広げたソフトホラー/児童向けダークファンタジーとして見れば、かなりよくできていたと思う。

怖すぎない。

グロテスクでもない。

設定が理解しやすい。

敵味方がわかりやすい。

異世界へ行って家族を救う冒険要素がある。

最終的には家族の再結束へ着地する。

後味も悪くない。

子供が「ちょっと怖い映画を観てみたい」と思ったときには、かなりちょうどいい塩梅だと思う。

いかにもブラムハウスらしい、安全運転のソフトホラーという感じ。

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だから最終的な評価としては、

大人向けホラーとして観ると、既視感が強く、怖さも意味深さも足りず、かなり物足りない。

でも、

子供向けソフトホラー、あるいは児童向けダークファンタジーとして観れば、わかりやすく破綻なく、きれいに完成している。

というところ。

もっと陰鬱な家族関係や子供の心理へ踏み込み、終盤を理解不能な異界からの脱出劇にしていれば、個人的にはずっと好みの大人向けホラーになったと思う。

ただ、それはこの作品が目指したものとは別物でもある。

なので「物足りない」は間違いなくあるけど、「駄作」とまでは全然思わない。

対象年齢を考えれば、むしろちゃんと仕事をした作品。

スピンオフを特別見たいほど世界観に奥行きがある作品ではないけれど、もし何か掘るのであれば、怪物を増やす話よりも、ジェシカが幼少期にチョンシーを生み出し、異界と最初に接触した時期をもっと心理ホラー寄りに描く前日譚のほうが、この題材には合いそう。

とはいえ、本編一本で十分まとまっている。

怖くはない。でも、子供が楽しめる「初めてのホラー」としては、なかなかちょうどいい一本だった。


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