『ゴースト・ハウス』の個人的な感想・考察
『ゴースト・ハウス』の個人的な感想・考察
①『ゴースト・ハウス』(2007年・アメリカ・監督:オキサイド・パン、ダニー・パン)
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②あらすじ
起
ソロモン一家は、再出発のために田舎の古い農場へ引っ越してくる。
父ロイはヒマワリ畑での農場経営に希望を託し、母デニースも家族を立て直そうとしていた。
しかし、長女ジェスだけはどこか家族の中で浮いている。
過去に事故を起こしたことで両親からの信頼を失っており、彼女の言葉はなかなか信じてもらえない。
幼い弟ベンは言葉を話さないが、家の中にいる“何か”を見ているようだった。
やがて家の中では、壁の染み、不気味な物音、影のような存在、不可解な現象が次々と起こり始める。
この家には明らかに何かがいる。
しかもその霊は、かなり強力で危険なものに見えた。
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承
ジェスは家の異変に気づき、家族に訴える。
けれど、両親は彼女の過去の事故の件もあり、なかなか信じようとしない。
この「見えているのに信じてもらえない」という構図が、作品の軸になっている。
ジェスは霊に怯えているだけではなく、自分の言葉を信じてもらえない孤立感とも戦っているんですよね。
一方で、父ロイは農場の再建に必死だった。
家族を立て直すためにも、この土地で成功しなければならない。
そこへ銀行員が現れ、この農場を15%増しで買いたい人物がいる、という話を持ちかける。
この銀行員は、かなり不誠実で金にいやらしい印象のキャラだった。
ただ、深掘りされる人物というよりは、ロイの焦りや欲、農場への執着を揺さぶるための装置なんだと思う。
もう曰く付き物件ではなくなったから、売れば得をする。
そういう現実側の誘惑として機能していたんでしょうね。
その一方で、ソロモン家に雇われた農場労働者ジョンが現れる。
ジョンは頼れる存在に見えるけれど、物語が進むにつれて、どこか不穏な気配を帯びていく。
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転
物語が進むにつれて、この家で起きている怪異の意味が変わってくる。
最初は、家に取り憑いた悪霊がソロモン一家を襲っているように見える。
でも実際には、霊は悪ではなかった。
霊たちは、自分たちに何が起きたのかを伝えようとしていた。
ここが良かった。
ゴーストって、えてして伝え方が上手くない。
怖がらせたいわけではなく、真実を伝えたいだけ。
でも方法が不器用だから、人間から見ると恐怖現象にしか見えない。
そして明らかになるのは、ジョンの正体。
彼はかつてこの農場に住んでいた一家の父親、ジョン・ロリンズだった。
農場経営に失敗し、借金や差し押さえに追い詰められ、家族が離れていこうとしたことで崩壊した男。
その末に、自分の家族を殺した加害者だった。
つまり、冒頭の惨劇は霊の仕業ではない。
生きていた人間、ジョンの仕業だった。
このオチ自体は、ジョンが登場してからわりと読める。
でも、読めていてもちゃんと面白い。
それは、ジェスの過去や家族関係の開示をかなり後半まで引っ張り、そのタイミングがクライマックスと綺麗に噛み合っていたからだと思う。
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結
ジョンは記憶を取り戻し、再び暴走する。
過去に自分の家族を殺した男が、今度はソロモン一家に襲いかかる。
ジェスはついに、家族を守る側に立つ。
これまで信用されなかった彼女が、最後には家族を救う存在になる。
ここで、ジェスの過去と家の過去が重なるんですよね。
霊たちは、ただ怖がらせるために出てきたのではない。
自分たちを殺した加害者を暴き、同じ悲劇を繰り返させないために現れていた。
最後、ジョンは家に引きずり込まれるようにして報いを受ける。
加害者の因果応報、ゴーストからの報いとしては綺麗にまとまっていた。
ただ、少し惜しいのはその後の現実処理。
警察が来た場面で、「地下貯蔵庫の床下から前の一家の遺体が発見された」くらいの説明があれば、かなりスッキリしたと思う。
あのままだと、ジョンもジョンの家族も異界に飛ばされたのか? という微妙なモヤりが残る。
ホラー演出としては綺麗なんだけど、現実側の決着があと一歩ほしかったですね。
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③考察・感想・まとめ
『ゴースト・ハウス』は、全体を通してかなりバランスよくできていた。
話の骨格だけ見れば、かなり王道です。
古い家に引っ越してきた一家。
子供だけが異変に気づく。
親は信じない。
家には過去の惨劇がある。
霊は実は悪ではなく、真実を伝えようとしている。
本当に怖いのは、生きている人間だった。
こうして並べると、古典的ともいえるし、ありふれているといえばありふれている。
でも、この作品は見せ方が上手い。
冒頭の事件でかなり強いインパクトを出して、「この家にはめちゃくちゃ強力なゴーストがいる」と思わせる。
そこから家の中の怪異を積み重ねて、観客にも「これは霊が襲ってきているのか?」と思わせる。
でも、ホラー慣れしていると、序盤からなんとなくわかるんですよね。
このゴースト、悪じゃないなって。
怖がらせてはいる。
でも、殺そうとしている感じではない。
むしろ何かを知らせようとしている。
伝え方が下手なだけで、目的は警告や告発に近い。
この「霊は悪ではなく、伝えようとしている被害者だった」という構図は王道だけど、やっぱりきちんと作れば強い。
そして本作は、その王道をちゃんと成立させていたと思う。
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邦題については、正直センスはない。
『ゴースト・ハウス』って、いかにも雑な邦題だし、どんな作品にもつけられそうな安さがある。
でも、この作品に関しては、邦題にして正解だったとも思う。
原題は『The Messengers』。
直訳すれば「伝える者たち」。
日本人の感覚でこれを見たら、ホラー慣れしている人ほど「あ、ゴーストが何かを伝える話なのね」と早めに読めてしまう。
つまり、タイトルの時点で霊の役割がかなり見えてしまうんですよね。
その点、『ゴースト・ハウス』は凡庸ではあるけれど、少なくとも霊が何をしているのかまでは明かしていない。
タイトルとしてのセンスはない。
でもネタバレ回避としては、原題より機能している。
なんとも微妙だけど、この邦題は悪いだけではなかったと思う。
まぁ、邦題ってどんな作品でもだいたいセンスないよな、とは思うけど。
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この作品で特に良かったのは、ジェスの過去を後半まで引っ張ったところ。
ジェスは最初から、家族の中で信用されていない。
でも、その理由はすぐには明かされない。
だから観客は、ジェスが本当に正しいのか、過去に何があったのか、少し疑いながら見ることになる。
そして後半になって、彼女が事故を起こし、弟ベンが話せなくなり、家族の信頼を失っていたことが明かされる。
この開示タイミングがかなり良かった。
霊の訴えが「信じてもらえない声」だとすれば、ジェスもまた「信じてもらえない側」の人間なんですよね。
だからこそ、彼女が霊の警告に気づき、最後に家族を救う流れにちゃんと意味が出る。
単に霊現象に巻き込まれるヒロインではなく、ジェス自身の家族内での立場と、前の一家の悲劇が重なっている。
ここが丁寧だった。
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ジョンの見せ方も悪くなかった。
もちろん、ジョンが登場してから「こいつ怪しいな」と思うのは早い。
頼れる農場労働者として出てくるけれど、ホラー映画であの立ち位置の男が何もないわけがない。
なので、正体そのものはわりと読める。
でも、読めることと、つまらないことは別なんだよね。
ジョンが実は過去の一家惨殺事件の加害者だった。
しかも霊は加害者ではなく、被害者だった。
この反転は王道だけど、物語の積み上げがきちんとしているから、読めてもちゃんと楽しめる。
「やっぱりそうだったか」と思いながらも、クライマックスに乗れる。
これはかなり大事。
意外性だけに頼った作品だと、オチが読めた瞬間に冷める。
でも『ゴースト・ハウス』は、オチが読めても演出と構成でちゃんと見せ切っている。
そこはかなり堅実だったと思う。
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銀行員の扱いは、少し気になるところではある。
回想に台詞がないから、細かい事情はわかりにくい。
おそらく、6年くらい前の凶作でジョンのヒマワリ畑がダメになり、借金を抱え、銀行から差し押さえられる流れになった。
そこで一家離散になりかけ、逆上したジョンが家族を殺した。
そんな理解でいいと思う。
ただ、現代パートで銀行員が「15%増しで購入したい人がいる」と言ってくるのは、日本人の感覚だと少し引っかかる。
売却したばかりの物件に、そんな勝手な話を持ちかけるのか?
契約済みなのに、それどういう扱いなの?
という違和感はある。
でも、ここは厳密な不動産描写というより、脚本上の揺さぶり装置でしょうね。
ロイに「この土地は価値がある」「売れば得をする」「農場にこだわる意味がある」と思わせる。
同時に、過去にこの土地で破滅したジョンと、現在この土地に賭けるロイを対比する。
銀行員は人物としては不誠実で金にいやらしい。
でも物語上は、農場という場所に現実的な重みを与えるためのキャラだったんだと思う。
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昨日観た『サリー 死霊と戯れる少女』と比べると、クオリティの差がかなりはっきり出る。
どちらも、ゴーストが関わる。
過去の事件がある。
加害者と被害者の構図がある。
因果応報や、霊からの報いという要素もある。
でも、『サリー』は素材が強いわりに、物語の核が整理されていなかった。
霊が何をしたいのか。
加害者がどう報いを受けるのか。
被害者の尊厳がどう扱われるのか。
そこがぼやけていた。
対して『ゴースト・ハウス』は、線がかなり綺麗。
霊は、伝えたい被害者。
加害者は、罪を隠して生きている人間。
報いは、隠された罪が暴かれ、同じ場所で引きずり戻されること。
この構造が明確だから、観ていて迷わない。
怖がらせるための霊現象も、最後にちゃんと意味が変わる。
ただのポルターガイストではなく、真実への導線だったとわかる。
この差は大きい。
『サリー』が駄作に感じたのは、素材の問題ではなく、整理と見せ方の問題だったんだと思う。
『ゴースト・ハウス』はありふれた素材でも、きちんと配置すればちゃんと面白くなる、という見本みたいな作品だった。
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総評としては、『ゴースト・ハウス』は大傑作ではない。
新しいホラーでもないし、驚くようなオチがあるわけでもない。
でも、90分ホラーとしてはかなり優秀。
無駄に引き延ばさず、家族ドラマ、怪異、過去の事件、加害者の正体、霊の目的をバランスよくまとめている。
読めるけど面白い。
王道だけど退屈しない。
古典的だけど、ちゃんと作られている。
こういうホラーはやっぱりいいですね。
霊が悪ではなく、伝え方が下手なだけの被害者だった。
本当に怖いのは、罪を隠して生きている人間だった。
そして最後には、その罪が家そのものに引きずり戻される。
因果応報ホラーとしても、家系ホラーとしても、かなり堅実にまとまっていたと思う。
邦題はダサい。
でも作品はちゃんと面白かったです。
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