『ザ・ウォッチャーズ』の個人的な考察・感想
『ザ・ウォッチャーズ』の個人的な考察・感想
①ザ・ウォッチャーズ(2024年・アメリカ・監督:イシャナ・ナイト・シャラマン)
①あらすじ
主人公ミナは、仕事で届け物を運ぶ途中、深い森の近くで車が故障してしまう。
助けを求めて森へ入り込んだ彼女は、日没が迫る中、見知らぬ女性マデリンに導かれ、巨大な一枚ガラスを備えた奇妙な小屋へと逃げ込む。
そこにはマデリンのほか、キアラ、ダニエルが暮らしていた。
彼らもまた森から出られなくなった人々であり、夜になると“ウォッチャーズ”と呼ばれる謎の存在が小屋のガラス越しに彼らを観察しにやってくるという。
なぜ自分たちは見られているのか。
ウォッチャーズとは何なのか。
そして、この森から本当に脱出することはできるのか。
ミナたちは少しずつ森の秘密へ近づいていく。
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起
森で車を失ったミナは、日没前にマデリンに助けられ、ガラス張りの小屋へ入る。
そこで知らされたのは、夜になると森の中から“ウォッチャーズ”が現れること。
彼らはガラスの向こうから人間たちを眺め、観察している。
日没後に小屋の外へ出れば命の保証はない。
森から出ようとしても方向感覚を狂わされ、元の場所へ戻ってきてしまう。
こうしてミナも、奇妙なルールに従いながら暮らす共同生活へ加わることになる。
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承
ミナたちは昼間に森を探索し、脱出方法を探していく。
しかし森は異常なほど広く、簡単には出口へたどり着けない。
一方、小屋の中でもウォッチャーズへの恐怖や脱出を巡る意見の違いから、人間同士の緊張が強まっていく。
ただ怪物から逃げるだけではなく、誰を信じるのか、どう生き延びるのかという疑心暗鬼も加わり、中盤は少しデスゲーム的な空気になっていく。
やがてミナたちは地下施設を発見。
そこに残された記録から、この森とウォッチャーズについて調査していた人物が存在したことを知り、脱出への糸口をつかむ。
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転
ウォッチャーズは、ただの正体不明の怪物ではなかった。
その正体は古い伝承に語られる“妖精”に近い存在。
かつて人間によって地下へ封じ込められ、人間を観察し、その姿や行動を模倣するようになった存在だった。
人間になりたい。
人間の世界へ入りたい。
だからこそ彼らは夜ごと鳥籠の人間たちを観察し、真似を続けていた。
ミナたちは地下施設に残された脱出経路を利用し、ついに森の外へ向かう。
しかし、その過程でダニエルはウォッチャーズの犠牲となってしまう。
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結
ミナたちは森から脱出することに成功する。
しかし物語は、ここで終わらない。
調査を進めたミナは、マデリンについて重大な真実へたどり着く。
マデリン自身が普通の人間ではなかった。
彼女は人間と妖精の血を受け継いだハーフリングであり、人間の姿を保ちながら森の外へ出ることのできる存在だった。
つまりミナたちは、森に封じられていた“怪物”を外の世界へ連れ出してしまったことになる。
ミナはその責任を取るためマデリンと対峙する。
しかし彼女を単なる怪物として排除することはできなかった。
孤独を抱え、自分が何者なのか苦しみながら生きてきたマデリンに、ミナは自分自身を重ねる。
怪物だから殺す。
人間だから救う。
そんな単純な線引きではなく、マデリンにも別の生き方があるのかもしれない。
そうした可能性を残し、物語は少し優しい余韻とともに終わる。
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③考察・感想『まとめ
森×異形ホラーとしての導入はかなり好みだった
最初の設定はかなり良かったと思う。
深い森。
脱出不能。
夜になると正体不明の何かがやってくる。
そして、小屋の中にいる人間を“見る”。
この時点では、かなり王道ながら魅力的な異形ホラーだった。
「なぜ見ているのか?」
「何を目的としているのか?」
「外に出たら何が起こるのか?」
ちゃんと先が気になる導入になっていました。
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壮大な森のはずなのに、映像はかなり狭く感じる
ただ、早い段階から低予算感は気になった。
物語上では、とんでもなく広大で脱出不能な森であるはず。
でも実際の撮影では、かなり限られた範囲を使っている感じが強い。
森の壮大さを見せる場面もCGで補っている印象があり、設定上のスケールと映像から受けるスケール感があまり一致していなかった。
こういう作品って、本来なら“森そのもの”が恐怖の主役になってもいいんですよね。
どこまで歩いても終わらない。
同じ場所へ戻ってくる。
どこから何かが見ているかわからない。
そういう空間的な恐怖をもっと押し出せたはず。
でも本作では、広大な森に閉じ込められているというより、だんだん“限られた舞台の中で話が進んでいる”感じが勝ってしまった。
ここはかなり惜しかった。
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展開は多い。でも全部ちょっとずつ浅い
本作は意外と展開が多い。
最初は森×怪物のホラー。
そこから共同生活の疑心暗鬼。
中盤ではデスゲームじみた緊張感。
地下施設を見つけてからは謎解き。
そして後半は脱出劇。
さらに最後には妖精伝承とハーフリングの話まで出てくる。
なので、観ていて退屈する作品ではなかった。
次から次へと何かは起こる。
ただ、そのぶんひとつひとつが浅い。
怪物ホラーとして恐怖をじっくり育てるわけでもない。
閉鎖空間での人間関係を深く掘るわけでもない。
脱出劇として派手な盛り上がりがあるわけでもない。
妖精伝承について徹底的に世界観を作り込むわけでもない。
全部ある。
でも全部、もう一歩ほしい。
そんな感じだった。
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ダニエルの死も、かなり“犠牲者を置きました”感
ダニエルだけが死亡する展開についても、正直かなり取ってつけたように感じた。
もちろんホラーなので犠牲者が出ること自体は何もおかしくない。
ただ、この作品ではそこまで強烈な死の恐怖が積み上げられていたわけでもなく、脱出する段階になって突然一人だけ殺されるため、
「全員無事ではホラーとして軽すぎるから、一人死なせておこう」
という物語上の処理に見えてしまった。
もう少し彼の死が物語や他の人物に影響する作りだったなら違ったと思う。
でも実際には、そのまま脱出劇が続いていく。
なので悲劇というより、“ホラー作品として必要な犠牲者枠”という印象が強かった。
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妖精という真相自体は嫌いではない
一方で、ウォッチャーズの正体が“妖精”に繋がっていく展開自体は嫌いではなかった。
怪物をただの怪物として終わらせず、人間を観察し、真似し、人間になろうとしている存在だった。
ここには少し面白いものがある。
人間を恐怖させる怪物である一方、人間に憧れている。
人間を襲う存在でありながら、人間そのものを理解したがっている。
この歪んだ関係性は、もっと掘り下げればかなり面白くなったと思う。
ただ、やっぱりここも説明されたところで物語がかなり先へ進んでしまう。
真相そのものは大きいのに、
「なるほど、そういう話だったのね」
くらいで通過してしまうのが惜しい。
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マデリンの真実と、最後の優しい着地
この作品で一番好きだったのは、むしろ最後だった。
マデリンがハーフリングだった。
そしてミナたちは、結果として森に封じられていた存在を外へ連れ出してしまった。
普通ならここから、
「怪物を倒してすべて解決」
でも成立する。
でも本作はそうしなかった。
ミナはマデリンに自分自身を重ねる。
自分が何者なのかわからない。
居場所を探している。
孤独を抱えている。
そういうマデリンの姿を見てしまったから、単純に怪物として排除することができない。
ここは意外と優しかった。
人間か怪物か。
善か悪か。
そういう二択ではなく、
「この存在にも救いがあるかもしれない」
という可能性を残して終わる。
この着地そのものは、かなり好きでした。
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だからこそ、そこまでの積み上げがもっと欲しかった
惜しいのは、ラストのテーマに対して、それまでの物語が十分に積み上がっていないこと。
マデリンの孤独。
人間になりたいという異形たちの願い。
ミナ自身の抱えているもの。
このあたりをもっと丁寧に重ねていたら、最後の選択はかなり強く響いたと思う。
でも道中は、とにかく次の展開へ進むことを優先している。
だからラストだけ急に少し繊細なんですよね。
着地点は悪くない。
むしろ好き。
でも、その場所へたどり着くまでの道が粗かった。
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まとめ
『ザ・ウォッチャーズ』は、アイデアの並べ方そのものは結構面白い作品だった。
森。
脱出不能。
監視する異形。
閉鎖空間。
疑心暗鬼。
妖精伝承。
人間と異形の混血。
材料だけ見ると、かなり面白いホラーになりそうだった。
そして実際、展開が次々と動くので最後まで退屈はしない。
ただ、ひとつひとつの要素を丁寧に見ていくと、どうしても作り込みの浅さが目立つ。
森の恐怖も。
異形の怖さも。
人間関係も。
脱出劇も。
真相も。
どれも「もう少し欲しかった」で終わってしまう。
特に終盤、ミナがマデリンを単純な怪物として処理せず、そこに救いの可能性を見るラストは悪くなかった。
だからこそ、そこへ至るまでがもっと丁寧だったなら、かなり印象の違う作品になったと思う。
退屈ではない。
アイデアも嫌いではない。
でも全体的に粗い。
そんな作品でした。
無理に深く語るほどの作品でもなかったので、私としてはこれくらいの温度感かな。
惜しい一本、でした。
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