アナフィラキシーショックとインフュージョンリアクション、違いは?
『アナフィラキシーショックとインフュージョンリアクション、違いは?』
今回は知ってても知らなくても大丈夫な、雑学の範疇のお話です。
生物学的製剤で懸念されるインフュージョンリアクションって、正確にはどんな反応なのかな?そういったお話をしていきたいと思います。
※知ったところで患者本人がどうのこうのできることではないので、雑学です。
※正確なことはすっごい難しいので、ざっくり説明です。
●アナフィラキシーショックって、どういう意味?
『特定のアレルゲン(特異抗原)』によって、I型アレルギー反応(即時型過敏反応)が生じた結果、アレルギー症状を引き起こす化学物質『ヒスタミン』などが遊離し、急激な呼吸困難、 循環不全を呈する、最悪命の危険がある最も重篤なアレルギー反応による病態。
これが『アナフィラキシーショック』です。
ちょっとよくわからないですよね。
言葉から分解していきましょう。
アナフィラキシー(anaphylaxis)とは、
・『防衛反応』を意味するフィラキシー(phylaxis)と、『否定』を意味するアナ(ana)がくっついた言葉です。
・そして、『ショック』とは、臓器に向かう血流が減少することで、酸素の供給量が低下し、それにより臓器不全やときに死にもつながる、生命を脅かす状態のことで、血圧が極度に低下すると、臓器に損傷が起きる可能性があり、そのような病態を 『ショック』と呼ぶそうです。
※MSDマニュアルにはそう記されています。
・この2つを合わせてみますと、アナフィラキシーショックとは『特定の抗原によって急速に現れる免疫による防衛反応(アレルギー)で、生命を脅かす症状』という意味になりますね。
すっごい噛み砕くと、フィラキシー(防衛反応)が血圧低下や意識障害など命の危険を伴う場合をアナフィラキシーショックという。
ラノベみたいに無理矢理に漢字にすると『発作的超過敏非防衛反応』、みたいな感じですかね。
・アレルギー(allergy)とは、『変じられた能力』あるいは『変作動』という意味で、フィラキシーとはちょっと異なり、フィラキシーと同じく免疫による防衛反応ではありますが、炎症を伴う過敏すぎる反応で、『過剰反応』ともいいます。
つまり、良い反応ではない、ですね。
正常な良い働きの防衛反応は、外敵を外へ排出するための、くしゃみ、鼻水、涙でしたり、発熱して外敵に不利な環境にしたり、とかですね。
アレルギーの場合は過剰なため、変作動、有害な反応ということになります。
・アレルギーという言葉はしばしば誤って使われています。単に『身体に合わない』や『拒否反応』の代替用語として使われがちですが、防衛反応と拒否反応は似てて非なるものということがわかるかと思います。拒否反応ではなく過剰防衛反応。
うーん、日本語の難しいニュアンス的なことで、一般の場合ですと区別つけにくいかもしれませんね。
臓器移植の拒絶反応で想像してみたら、それらとアレルギーはメカニズムが違うということが想像できるかなーと思います。
・アレルギー反応によってくしゃみや鼻水などがでるのは、抗原を外へ排出するための反応でありますが、過剰であるため花粉症など症状が強すぎると生活に支障が生じ、治療が必要になる場合があります。
しかし、くしゃみや鼻水で命の危機に瀕することはありません。
これに対しアナフィラキシーショックは、メカニズムとしては同様ですが、皮膚や呼吸器、消化器など『複数の臓器に急速に全身性の症状が出る状態』で、命にも関わる重篤な反応なため、通常のアレルギー反応とは区別されています。
・ana(否定)をつけてアナフィラキシーと呼ぶのは、この防衛反応は守るどころか真逆に命を脅かすほどの攻撃になってしまっている一番有害な防衛反応だから、ですね。
・というわけで、それぞれ区別してみると、
フィラキシー→正常な防衛反応
アレルギー→過剰防衛反応(有害)
アナフィラキシーショック→死ぬほど危険なアレルギー反応(最害悪)
といった感じですね。
・どういうふうに引き起こされる?
アナフィラキシーショックは、抗原の接触や侵入によってに感作される準備期間(実際にアレルギー反応がでるまでの間)の後、その原因物質が再び生体に接触・侵入することで引き起こされ、血圧急低下、意識障害、呼吸困難、臓器損傷など生命に危機を与える『全身的なアレルギー反応』。
ちょっと複雑ですが、二度目がヤバい!!と言われる理由がここに当たります。ハチがやはり代表例ですよね。
一度目は刺されたとこが腫れるくらい(アレルギー反応は起こらない)ですが、二度目にアナフィラキシーショック(重篤なアレルギー反応)になってしまう、というやつです。
一度目と二度目の間、これが感作されるまでの準備期間ですね。
ハチ、ラテックス、特定の食物など、アナフィラキシーショックを引き起こす抗原は様々で、出るか出ないかも検査しなければわかりませんし、個人差も当然あります。
みだりに警戒するのも良くはありませんが、一度でも酷すぎる症状が出たことがある場合は、二度目に用心して、二度目がくる前に一度病院で検査することが望ましいでしょう。
ここから先が私たちIBDにとっては大事なことになる『インフュージョンリアクション』のお話です。
●インフュージョンリアクションとは?
インフュージョンリアクションとは、急性輸液反応、注入反応、点滴反応などの意味で、『分子標的治療薬の点滴時』にみられる『副作用』のことです。
抗がん剤でよくみられる過敏症やショック症状とは異なる特有の症状がみられることから区別されていて、日本語には訳さず英語で
『Infusion Related Reaction: IRR』と表記されます。
うーん、日本語にならないという点で余計によくわからないですよね。
ですが表記としては英語のみになりますが、言葉としては『急性輸注反応』が一番イメージしやすいかと思います。
ショック症状にも似ていて、最悪命の危険もあるため、しばしばアナフィラキシーショックと同じようなもん、って解釈されますが、正確にはまったく別物です。
まず、これは『副作用』である、というところがアナフィラキシーショックとは決定的に違うというところですね。
もう少し細かく見ていきましょう。
・抗がん剤や生物学的製剤など、特定のターゲットに対して効力を発揮する分子標的治療薬(タンパク質製剤)を投与した時に有害反応として起こりやすく、製剤に対して身体が異常な反応 を示すことを『過敏症』といいます。
特定の、というのはレミケードの場合ですとサイトカインを抑制しますね。このサイトカインが特定のターゲット(分子標的)で、これを抑制するお薬であるレミケードが『タンパク質製剤』です。
・投与時の『過敏症(過敏反応)』は、免疫の働きから起こる『即時型アレルギー反応』と、免疫の働きとは関係なく『点滴注射の反応によってアレルギーの様な症状の副作用』があります。後者がIRR:インフュージョンリアクションですね。
また、過敏症のアレルギー反応も通常のアレルギー反応とは別のメカニズムと考えられています。
ラノベみたいに無理矢理に漢字にすると、『急性特定輸液注入時過敏反応』みたな感じですかね。
※こんな表現考える意味ない
・そして、インフュージョンリアクションの発生機序は明らかになっておりません。
生物学的製剤のレミケードのように、マウスの異種タンパクが含まれていることや、癌などの腫瘍細胞の急速な崩壊によって産生、放出される物質など(サイトカイン)が原因で炎症、アレルギー 反応を引き起こす、と推測されています。
また、サイトカインの放出量が多ければ多いほど重篤になる傾向が明らかになっています。
ですが癌治療でなく私たちIBDの生物学的製剤による治療の場合、腫瘍がない場合、また完全ヒト由来の製剤である場合、こうした場合でもインフュージョンリアクションが起こることがあるため、やっぱりメカニズムは謎です。防衛反応かどうかすら怪しいですね。
※完全ヒト由来のほうが起こりにくいというデータはあります。
つまり、アレルギーの場合もあれば、そうではなく点滴注射そのものによって引き起こされるアレルギーのうような症状がある、この2つが過敏症内訳ですね。
過敏症①アレルギー
過敏症②インフュージョンリアクション→アレルギーではない(副作用)
また、インフュージョンリアクションはアナフィラキシーショックと異なり、二回目以降毎回必ず現れるとは限らないという点もあります。
アナフィラキシーショックは、原因たる抗原に対して毎回死ぬほどの防衛反応とショックが起きますが(二度目も三度目も四度目も、何度でも危険→絶対に回避する必要があ)、インフュージョンリアクションは起きるときと起きないときがあり、個人差も大きく、アレルギーのように予めテストもできないので『やってみないとわからない』というリスクもあります。
・反応が起きやすいタイミング
症状の程度としては軽症から中等度がほとんどで、重篤な副作用がでるケースは少ないですが、油断はできません。投与時には細心の注意が必要になります。
データとしては、初回時が最も多く、初回時に反応がなかった場合でも二回目に反応がでるケースが多いです。
それ以降になりますと確率はぐっと下がっていく傾向があります。
また、投与から反応までの時間が早いほど、重篤化しやすいという傾向もあります。
逆に投与開始してから時間がある程度経ってから現れる反応は、軽症の場合が多いです。
・症状
軽症であれば一般的なアレルギー反応のように、くしゃみや痒み程度です。
中等度になりますと、呼吸が浅くなったり、発疹がでたり、関節や筋肉が痛くなったりします。
重篤化しますと、気管支痙攣や血圧低下などの循環不全を伴い致死的になり得ます。大変危険なので早い段階での発見、対応が望まれます。
そのため、導入時には入院をして行うことが多いのですね。
※ちなみに私はレミケードの一泊二日入院前しての導入で、二回目のときに呼吸が止まりましたが、一時投与を止めてステロイドで散らし、落ち着いてから6時間以上かけてゆっくり投与を再開しました。
三回目もゆっくりめで投与しましたが呼吸止まりましたので、やはり6時間かけて超ゆっくり投与。
四回目は止まりませんでしたが呼吸はやはり少し浅くなり血圧も不安定でした。
そのため、その後も通常よりもずっと低速で点滴する必要があり、外来ではできないので一泊二日入院で投与していました。
三年くらいそうきてましたが、まったくインフュージョンリアクションの気はでなくなったので、それ以降外来で通常通り投与しています。それから数年、一度も起きておりません。
●治療
アナフィラキシーショックも、インフュージョンリアクションも、起きてしまった際の処置としては同じようになります。
抗ヒスタミン薬、NSAIDs(強い鎮静剤)、麻薬性薬剤、などの静脈内輸液になります。
●まとめ
・アナフィラキシーショックとインフュージョンリアクションは別物
・アナフィラキシーショックは、アレルギー反応の一番ヤバいやつで、ショック症状で致死的なほど危険。
抗原が侵入すれば何度でもこのショック症状は起こる。
・インフュージョンリアクションは、お薬を投与する時に起こる副作用で、メカニズムは謎。
アナフィラキシーショックほど重篤化することは少ないが、起こるときは起こるので警戒は必要。
初回、二回目が発現率が高く、異常がなければ安定して反応が起こりにくい。
・治療はいずれもお薬で散らす。
こんなところでしょうか。最初にお話した通り、知ってても知らなくても自分ではどうにもしようのないのがインフュージョンリアクションですね。自分で回避することがある程度可能なアナフィラキシーショックとはそこが違いますよね。
また、インフュージョンリアクションは、メカニズムが謎なため、他人に上手く説明することができませんよね。
なので代わりに『アナフィラキシーショックみたいなもん』、って説明することがでてくるわけですね。
メカニズムは全然違うし、アレルギーでもないけど、命に関わる場合もありますので、正しくはないけど代替説明としては結局、「アナフィラキシーショックみたいなもん」は都合がイイですね。
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