採血・注射・点滴雑学パック1
『採血・注射・点滴雑学パック1』
今回は注射や点滴、採血など針系に関する素朴な疑問、知ってても知らなくても特に変わりはないけど地味に気になる事、そんな雑学をまとめて紹介していきたいと思います。
※知らなくてもまったく問題ないので、興味のある方だけお暇でしたら読んでみてください。
●注射と点滴ってなにが違うの?
・そもそも『注射』とは、『検査や治療のため、針を使って身体に薬物を注入する方法』を指します。なので注射器を使ってお薬やワクチン摂取や、点滴でお薬や栄養を補給するのもすべて『注射』になります。
注入されたお薬は点滴以外の注射では、リンパ管から毛細血管、静脈血管に入り、全身をめぐることで効果を発揮します。
・お薬や栄養等を注入するわけではない『採血』は、採血用針と注射器を用いますが『注射』とはいいません。注入はしてませんからね。血液を吸引しています。採血は『採血』といいます。
・そして、針を刺すという行為のことは、『穿刺(せんし)』といいます。
血液や体液、細胞などの採取のために、体外から血管、体腔内、内臓に針を刺します。
穿刺して、採血する。穿刺して、注射する。ですね。
・ちなみに豆知識。針を刺すのは『穿刺』で、針を抜くことは『抜針(ばっしん)』、針を抜いた跡のことは『注刺痕(ちゅうしこん)』といいます。
・お薬を注入する方法すべてが注射とはいっても、部位や方法によって様々な種類があり、呼び方が変わってきます。
大雑把ですがご紹介しますね。
①皮内注射
皮膚の1番外側にある表皮と、その下の真皮の間にお薬を注入する方法です。
注射の中では効果が現れるまでにもっとも時間がかかりますが、治療ではなく、主に特定の薬物に対する反応をチェックする『アレルギー検査』が目的です。アトピー性皮膚炎や気管支喘息などでこの方法が用いらます。
②皮下注射
皮膚と筋肉の層の間にある、脂肪が主になっている皮下組織にお薬を注入する方法です。
皮内注射の次に効果があらわれるまでに時間がかかりますが、長続きするのが特徴です。ヒュミラなどの生物学的製剤や、インフルエンザワクチンや水痘ワクチン、日本脳炎ワクチンなど、日本で行われている予防接種の多くは、この方法が用いられています。
③静脈注射
静脈という血管の中に直接、お薬を注入する方法です。
5分以内に素早く身体全体を廻るため、注射の中では最も早く効果が現れやすく、また副作用も早く現れます。
『点滴』も静脈内注射の一つです。他の方法の注射に比べ、多種多様の薬物や水分、栄養分を注入するのに適しており、急な病態悪化や脱水症など命に関わる緊急時、長期的にご飯が十分に食べられない時などに用いられます。
『中心静脈栄養(CV)』もこれに該当しますね。
④筋肉注射
皮膚表面から1番深いところにある、筋肉にお薬を注入する方法です。
『痛い!』とよくいわれるやつですね。
静脈内注射の次に早く効果が現れやすく、刺激の強い薬物でも注入できるのが特徴です。胃や大腸の内視鏡検査でお腹の動きを止めるお薬(ブスコパン)や、女児だけが受けるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンや、B型肝炎ウイルスなどの予防接種などに、この方法が用いられています。
⑤その他
穿刺には、単に採血、予防接種、点滴、局所麻酔等だけでなく、その他に、背骨の腰の部分にあたる骨(腰椎)に針を刺して、中にある髄液を採る『腰椎穿刺』、胸膜腔に溜まった空気や、胸水や膿瘍などの液体を抜く『胸腔穿刺』、胸骨や腸骨に注射針を指して骨髄の一部を採取する『骨髄穿刺』、お腹に溜まった腹水や膿瘍などの液体を抜く『腹腔穿刺』などがあります。
いずれも溜まっている液体が何であるか検査したり、病気の診断するために穿刺し採取すると共に、場合によってお薬を注射したりドレーンを挿入して出口を作って外へ持続的に排出させたりすることもあります。
腰椎穿刺はクモ膜下出血や髄膜炎など、骨髄穿刺は白血病や癌の転移など血液に関する病気の検査・診断のときに行われます。
とにかく色々ありすぎて素人には全部は覚えられませんね。
●刺すときめっちゃ痛いことあるけど、下手くそなの?
確かに医療スタッフ(医師、看護師、臨床検査技師)の技術面もありますが、どんな熟練者が行う場合でも、穿刺や注射が『めっちゃ痛い』ことはあります。
それは、3つの理由があります。
①お薬の浸透圧の差によるもの
浸透圧とは、濃度の違いにより生じる圧力のこと。血液の浸透圧は285mOsm/L(ミリオスモル/リットル→こんな単位、常人はまず知らない)とされていますが、血液と薬物の間には浸透圧があるため、その差が小さい薬物ほど刺激が少なく、痛みを感じにくくなります。
経口補水液OS-1でイメージしてみるとわかりやすいですね。体液に近い浸透圧ですと吸収が良い。
浸透圧の高い経腸栄養剤では高い→低くするために腸液がたくさん必要となりお腹がゴロゴロしやすい、そのためゆっくり飲む必要がある。
ヒュミラのように浸透圧がすごく高いお薬の場合、結構強い痛みがでますね。
『濃いのは痛い!』とだけ認識してれば良いかと。
②お薬のpHの差による痛み
pHとは、その物質が『酸性』か『アルカリ性』かをしめす基準値のことで、水のpH7.0が『中性』とされています。
私たちの血液は、通常pH7.4で『ほぼ中性』に保たれており、注入されるお薬と血液とのpHの差が小さいほど刺激が弱く、痛みも小さくなります。
どのお薬が酸性寄りでどのお薬がアルカリ性寄りかなんて、まず知らないしわからないですよね。
浸透圧と同じように『お薬によっては痛い!』という認識で良いかと。
③痛点!!
これが1番無差別的に起こりやすい痛みかと思います。お薬だけでなく採血でも起こりやすい痛みですからね。
刺すときの痛みは、皮膚の表面にある痛みを感じる「痛点(つうてん)」があるため痛みを感じます。痛点は、『皮膚の表面1平方センチメートルあたり平均130ほどある』、そうです。
(どれくらいの範囲にいくつあるとかちょっとイメージできないですよね……)
そのため、注射の針が細いほど痛点を避けることが可能となり、痛みを感じにくくなります。
が、痛点とはそもそも目に見えません。どんな熟練者でも痛点を100%回避して刺すことは不可能です。
そのため、運悪く痛点にガッツリ刺さってしまうと強い痛みがでる場合があります。
ほとんど博打ですね。
●針刺すとき、親指を入れて手を握るのなんで?
・理由はシンプルで、親指を中にして手を握ると末梢の静脈血が血管に集まり、血管が怒張(血管を盛り上げる)し、針を刺しをしやすい状態になります。
細かったり深いところに血管が走ってたりしてなかなか血管が浮きにくい方の場合、たくさんグーパーしたり、暖めたり、叩いたりして怒張させますよね。
※採血中はグーパーしたりしてはいけません。血液中の値が変わってしまうそうです。値とはなんぞや?は、きっと血液の成分の状態が変化してしまう?詳しくは知らないです…。
刺したあとは軽く握る程度でOK。
●採血で5本も6本も血とられるのなんなん?ムカつく。気持ち悪くなる
・検査項目の数によって必要な血液の量が変わってきますので、会社の健康診断のように項目が1番少ない場合ですと1本で済みますが、IBDのように炎症反応でしたり、薬の副作用のチェックのため腎臓や肝臓を細かくみたり、潰瘍性大腸炎の場合ですと血沈のチェックがありましたり、常人よりもチェックしなけらばならない項目が多いので、本数多くなってしまうのは仕方ありません。
それだけ精密に検査してるということです。そこまでしないと危険な見落としが生じてしまい、異変の発見が遅れてしまえばそれだけ生命の危機にも繋がってしまいますので、本数多くなることは受け入れましょう。
・気分が悪くなってしまう方は、針を見ること、血液を見ること、で『迷走神経反射』による貧血が起きていることが考えられます。
10数ml程度の採血の量で血が足りなくなることはありません。緊張によるストレスで少し脳がパニックを起こして貧血になっている状態です。
『刺してるシーンを見ないようにする』などして、気を紛らわすことで軽減することもあります。
●採血のあのセット、どうなってるん?針刺したままで採血の試験管を交換するとき、血液溢れたりしない不思議。
試験管の目盛りの容量ピッタリで血液の吸い上げが止まるのも不思議。
採血って結構不思議がいっぱいですよね。
・まず、採血に用いられる針には、『直針』と『翼状針』があります。
違いは明確にあって、翼状針の場合、直針に比べて、
①針を刺す際や採血用試験管を変える際の痛みが少ない
②針が短く深く刺せないため、神経損傷などトラブルが起こりにくい
③針を刺した時にチューブ内に逆流する血液が確認できるため、採血のやり直しも起こりにくい
などのメリットがあります。けど、コストも高いです。
また、チューブ内に残る血液は吸い上げしきれないので、採血量が足りなくならないよう注意が必要です。
・採血セットの一式
①シリンジ採血の場合
シリンジとは、注射器のことをいい、シリンジ採血とは採血者が自ら採血量を調節して吸引する採血方法です。
一般的な『注射器でピストン(プランジャー)を引いて吸い上げるセット』で、一度にたくさん吸引し、採血後に速やかに採血試験管(スピッツ)に分けて注入(分注)し検査します。
針は直針も翼状針もどちらもあります。
※シリンジ→注射器、採血試験管→スピッツ、これは覚えておくと医療スタッフの話がわかりやすいかも。
②真空管採血の場合
真空採血管とは、 採血者が自ら採血量を調整する必要がない1本ずつ自動的に(後述)検査に必要な血液量を採ることができるように、『 陰圧』になっているスピッツです。
この採血方法では、 シリンジ採血のようにピストンを引いて吸引する手間はなく、ホルダーにスピッツを挿入しただけで勝手に(自動的に)血液がスピッツ内に吸引されていきます。
※陰圧→外よりも空気圧が低い状態。高いほうから低いほう流れるので、低いほうから高いほうへ流れることはありません。
『針』と、採血試験管(スピッツ)を入れる『真空採血管ホルダー』、翼状針の場合は針とホルダーを繋ぐ『チューブ』、そしてあの試験管『真空採血管』で構成されたセットになります。
針は直針も翼状針もどちらもあります。
・シリンジも真空採血管も、スピッツはのキャップは色分けがされており、吸引する順番が採血者にわかりわすくなっています。
※双方、色は共通で統一されているわけではないので、素人の私はちょっと覚えきれない……
色分けして順番(採血する優先順位)決まっている理由は、
血液の凝固によって検査の値が変わってきてしまうため、抗凝固薬を使っているスピッツで検査の値の誤差を少なくするために優先順位が決まっているそうです。
また、採血量が厳密に決まっている場合、吸引できる量が足りなくなってしまうと検査ができないため、この2つの理由から血液が固まりにくい凝固薬が入っているスピッツから優先的に採血・分注します。
『血液の凝固を検査』と『赤沈の検査』、この2つは最優先だそうです。
・クリニックなどでは直針と普通の採血試験管やシリンジのことが多いです。理由は安く済むからという点と、採血する患者数が少ない、精密な検査をすることが少ないなど、というのがあります。
・シリンジ採血のデメリットとして、採血者の熟練度が低くシリンジを操作することに慣れていないと技術的に困難であることや、採取した血液を各スピッツに分注する際に針刺し事故を起こす可能性が高いです。
(一本のシリンジから、検査項目の数だけいくつかのスピッツに分けて注入する必要があります)
・これに対し真空管採血では、技術的に容易であることや、スピッツに分注する手間もなく(そのまま各検査に持っていける)、安全で効率的です。
大学病院などでは採血センターがあり、システマチックに多くの患者さんの採血ができる仕組みになっていますが、採血者が自ら吸引量を調整しないで済む真空採血試験管は作業効率も高くよりスマートに採血を行えるため、この真空採血管とそれに適合する採血セットを用いています。
しかし、真空管採血はコストが高いです。
長くなりましたが疑問の答えとしましては、
・採血管の目盛りの容量◯◯mlピッタリで吸引が止まるのは、『真空採血管』です。
止まる理由は、採血管内の内圧が陰圧で、それぞれ採血管ごとに圧力が調整されているからだそうです。
そのため、設定されてる容量以上は吸引されないで止まるんですね。
スピッツ交換時に血が溢れでることがないのも『真空採血管ホルダー』も、内圧が陰圧に調整されているからだそうです。
『採血・注射・点滴雑談パック2』に続きます。
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