IBDと血管迷走神経反射による脳貧血

 『IBDと血管迷走神経反射による脳貧血』


IBDに限ったことではありまんが、これまでお話しました通り脱水になりやすく、血圧が低い傾向にあるIBDは日常よく起こりやすい現象です。また、最近お話してきました熱中症や体温調節機能でも登場した『自律神経』が大きく絡んでいます。

ですのでこれを機に、その迷走神経反射のメカニズムについてちょっと掘り下げて説明してみたいと思います。


●迷走神経反射ってなに?

迷走神経反射とは、長時間の立ち姿勢や疲れなどの身体、睡眠不足や緊張やといった心因や、恐怖やストレスなどの環境がきっかけで迷走神経が刺激され、反射的に血圧や脈拍が下がるなどが起こる反応のことです。

これにより、めまいや立ちくらみ、吐き気や酷いケースですと失神してしまいます。

正確には『血管迷走神経性失神』といい、失神の約6割を占める『反射性失神』に含まれる症状です。

失神までしなくとも、胸のあたりからお腹、脚へとゾゾゾっとなにかが下がっていく感触はみなさん覚えがあると思います。血圧の急降下ですね。


●どんな症状?

主な症状に、めまいや立ちくらみ、吐き気、酷いケースですと失神してしまいます。これらの症状より、転倒して頭部を強打してしまうことが大きな問題となります。


●なんで起こるの?原因は?

長時間の同じ姿勢、過労、脱水、痛みや恐怖などの精神的緊張なども要因になります。

虚弱な方や、若い方、高齢者に多く見られます。

同じ姿勢とは、たとえば、長時間立った状態にいることで血液が下降して、体の一番上にある頭の方に血や酸素がうまく巡らなくなることで、めまいや吐き気などの症状が現れます。

長時間の座りっぱなし姿勢では、立ち上がったときに体中の血液が重力の作用で一挙に下半身に流れ込み、脳から血や酸素がうまく巡らないことで起きます。

立ちっぱなしでも座りっぱなしでも起こる現象ですね。

長時間横になっている姿勢から起き上がるときも同様に起こります。

寝不足での満員電車なども起きやすいです。

また、トイレで用を足した後も血圧が急降下するため、立ちくらみが起きます。これは高齢者やIBDに多く見られますね。


こうした脳への一時的な血液と酸素不足による立ちくらみは、『脳貧血』と呼ばれ、血液中のヘモグロビン量や、血球成分量が少ない事が原因の『血液問題の貧血』とは異なり、血液問題ではありません。


●精神的緊張状態・強いストレスで起こる迷走神経反射

身体のほうは誰もがしばしば体験することなのでよくわかるかと思いますが、「精神的緊張って?」というところが案外知られていません。

たとえば、男性に多く見られますが、『血を見るのが苦手』ですとか、『解剖実習』のようなグロテスクなもの、試験前や面接前、試合や発表会の前、婚約者のご両親に挨拶いく前などの直前に一気にくる強い緊張』、絶叫系アトラクション、ホラー映画、または、目の前で起こった受け入れ難い事故や火事など命に関わる『恐怖』、などが『精神的緊張』になります。

ようするに瞬間的にドカン!とくる強いストレスですね。

こうして列挙してみると思い当たることあると思います。

これらで起こる立ちくらみやめまい、ふらつきなども迷走神経反射です。


●なんで緊張や恐怖でも迷走神経反射が起こるの?

身体のほうは別として、なんで緊張や恐怖で血圧が下がっちゃうのか、イメージがしずらいですよね。

なのでまずは自律神経の仕組みを簡単に説明します。


●自律神経の仕組みとバランス

自律神経は、内臓や血管などの働きを24時間365日、休まず自動的に安定維持に調整してくれるシステムです。そのシステムは、『交感神経』と『副交感神経』のバランスによって成り立っています。

この『交感神経』と『副交感神経』とは、それぞれ役割が異なり、『交感神経』は、主にストレスを受けたときや緊急事態が起こったときに優位になります。血圧や心拍数を上昇させるのが交感神経の働きです。

一方で『副交感神経』は、血圧や心拍数を下げ、体を回復させる役割があります。さらに消化管の機能を助け、健やかな体に導くための重要な神経です。

ざっくり分けると、活動する時に交感神経の働きが必要になり、休息をとるときに副交感神経の働きが必要になります


交感神経と副交感神経はバランスよく働くことで機能しています。

たとえば人間は恒温動物ですが、体温の安定維持してくれているのが交感神経と副交感神経の働きで、体内の環境はある一定の範囲の状態に保てるようにつくられています。これが『恒常性(ホメオスタシス)』ですね。

交感神経と副交感神経のバランスが上手にとれていると、健康的な状態が維持できます。


しかし、このバランスが崩れてしまうと様々な健康障害が引き起こされます。

たとえば、慢性的なストレスによって『交感神経』が過剰に緊張した状態になると、常に緊張状態が続いてしまい、リラックス状態を作り出す『副交感神経』への切り替えが上手くできなくなってしまいます。

副交感神経のはたらきが弱く交感神経のはたらきのほうが優位であるからですね。

その結果、頭痛、肩こり、睡眠障害胃腸障害うつ病などの原因になります。


『迷走神経』は、心身がリラックスしているときに働く『副交感神経』の1つで、この迷走神経は肺や心臓などの働きにも関わっています。この副交感神経は身体を鎮静化する働きで、活性化(優位)になりますと血圧が低下します。


●恐怖や緊張による迷走神経反射の仕組み

通常は、ストレスがかかると交感神経の働きが活発化します。しかし、瞬間的に強いストレスがかかると副交感神経の働きが活発になることがあり、交感神経の働きが抑制され副交感神経である迷走神経が緊張状態になります。

その結果、血圧と心拍数が急速に減少し、脳貧血となって失神してしまうのが緊張や恐怖による血管迷走神経反射です。

あまりにビックリして卒倒しちゃう、という現象あるあるですね。


気が抜ける』、『腰が抜ける』、といった現象も、迷走神経反射ということがわかると思います。

まず、何がしかの事で緊張状態が続く→

交感神経優位、動悸・息切れ・血圧上昇・発汗・口の渇きなど→

耐えて耐えて頑張って→

事が過ぎてホッとする→

副交感神経優位、血圧下降、脈拍低下→

ふらつき、腰が抜ける。


自律神経の仕組みは難しいですよね。私もきちんと理解ができているかは怪しいです。交感神経と副交感神経のバランスですから、どちらかが強く優位であると、極端な反作用のように現れる、それが迷走神経反射ってやつで、『自律神経がパニック状態になると起こる』と捉えておくと覚えやすいかもですね。


●迷走神経反射は病気?

症状名がついているので病気といえば病気ですが、迷走神経反射には特別な治療法はありません。

迷走神経反射は、自律神経反射の一つで若い健康な方から高齢者で誰にでも起こりうる反射です。

生命を維持しようとする正常な生理的防衛反応なので「病気だから治さねば!」と捉えるものではありません。根本的な治療はありませんし、100%回避することも不可能です。

しかし、問題となるのは強い反射による失神ですね。転倒して頭部をぶつけるなどの大怪我になりかねませんから、予防できることは予防しておいたほうが望ましいです。

ですから、姿勢や睡眠などの生活習慣の改善やストレスケアなど、まず心身が健康であるようにすることが大切です。

しかしそれでも、突発的に起こるアクシデント、それに対する強いストレスは回避できるものではありませんので、迷走神経反射が起きたときどうすればいいのか、知識で備えておく必要はあるかもしれません。


●迷走神経反射が起きたらどうしたらいい?

迷走神経反射自体は、横になって休むことなどで治るので、特に健康上大きな問題になることはありませんが、転倒により怪我をしてしまわないよう注意が必要です。 慌てず、落ち着いて、机や壁などに手を付いて、一呼吸しましょう。それから横になると良いです。


●間違いやすい別の病気

長時間の同じ姿勢で引き起こされるこれらの症状は、迷走神経反射と思っていたら別の病気だった、ということもあります。

誤認識しやすい病気として、

体の平衡感覚(バランスを保とうとする感覚)を司る内耳にリンパ液が過剰にたまることが原因で発症しする『メニエール病』や、耳石が剥がれることで引き起こされる『良性発作性頭位めまい症』などがあります。

一過性でない立ちくらみやめまい、吐き気がする場合は耳鼻科を受診しましょう。


●まとめ

昔はよく、『ちびまる子ちゃんの藤木くん』みたいな虚弱な子が、全校集会で倒れちゃう、というイメージが強かったと思います。

ちびまる子ちゃんの影響もあるかと思いますが、『貧血は虚弱な子がなるもの』という認識でいる方が今でも多いです。

勿論、それも間違いではありせんが、それだけではないことがわかったかと思います。


ゆとり教育の頃から全校集会では座らせるようになりましたが、それでも気分が悪くなる、ふらつく、という子は変わらずおります。

こうした点からもわかるかと思いますが、『身体が弱いから』、ということだけではなく、『ストレスに弱い子』も起きやすいということがみえてきますね。

よく倒れてしまう子の中には、じっとしていられない発達障害の『ADHD』であったり、周りと合わせることが苦手な『自閉症』であったりすることもしばしば確認されています。


IBDの方は潜在的に神経質な方が多く、ストレスに弱い傾向があります。これはストレスによって病態が悪化してしまうことからもわかりますね。また、最初にお話した通り、低血圧や脱水の傾向も顕著ですので、迷走神経反射が起こりやすいのです。


迷走神経反射は完璧に避けることは不可能です。どれだけ用心していてと、起きるときは起きてしまいます。

そうしたときは、慌てず、落ち着いて、休むこと。そして不必要に気にしすぎてストレスを溜めないことです。

勿論、あまりに頻発するようでしたら医師と要相談ですが、「誰もが起きるものなんだ」、「私たちは起きやすいのは仕方ない」、と受け入れることも心の安静に大切です。


上手にコントロールできるような自分なりのルーチンを身に付けていきましょう。

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